2024/08/22
そのページに書かれた世界の秘密へととどく青葉のひかりと翳り
私の住んでいるアパートの近くに市立図書館の分室があり、今夏はじめて訪れた。本館から取り寄せたCDを借りるだけの予定だったのだが、分室の本を借りることで景品がもらえる夏休み特別企画を行っているらしく、せっかくなので本を借りていくことにした。
その分室は高校時代の図書室をさらにコンパクトにしたようなつくりで、蔵書は児童書から学術書まで幅広かった。いろいろと物色するなかで、児童書のコーナーにあった「学研まんがでよくわかるシリーズ」の「◯◯のひみつ」と題された一群が気になって、『エアコンのひみつ』『Wi-Fiのひみつ』『音楽の著作権のひみつ』を借りて帰った。
ものすごく幼いころ、『週間そーなんだ!』や魚の図鑑をよく読んでいた。そこには宇宙の成り立ちや私の知らない海の生物のことが記されていて、私は興味津々だったと記憶している。私の知らない世界の秘密。それを閉じ込めた物体として本は存在していた。
それから長い月日が経ち、世界の秘密が本に記されないこともあるし、本以外のかたちで伝達されることもあることを私は知った。世界の秘密を理解したとしても、私たちの手に負えないことが多いことも知った。本と世界の秘密を直結させる、かつての私の理解は、私の幼さや私の生きていた世界の狭さを証しているのだろう。
それでも、『◯◯のひみつ』と題された本を見たとき、以前と似たような高揚感や万能感、知的好奇心が湧いたのだった。もしかしたら、私たちはページをめくることで、これまで知らなかった世界の秘密に本当に到達できるのかもしれない。昔の私たちに戻って、あのときのような多幸感を覚えながら。あるいは、今の私たちのままで、過去に戻れない事実を受け入れながら。